ニッポンの、みせものやさん

▼大寅興行さんと、現代の見世物興行を追ったドキュメンタリー映画「ニッポンの、みせものやさん」
レイトショーならともかく、まさかのモーニングショーでびっくり。
そして私がわがままを言って、上映初日に見に行くことに。

▼おまけつきパンフレットが、限定300部で発売されるとの情報を得るも、人出は未知数。
10時30分上映開始に対して、9時45分に着いちゃったよちょっと早めかなと思ったら
先客が8人もいましたよ。自分を棚に上げますがみんな物好きな。
師匠が遅れるとのことで、まぁ師匠の分を弟子が買っておくのは当然のことですよねと
チケットとおまけつきパンフを2人分買って、席を確保。

▼そしたらまぁすごい勢いで後から人が来て、10時17分、まさかの満席札止め
防災の関係上、立ち見はできないそうです。
目の前で打ち切られて茫然とする人多数。
まぁまさか朝っぱらからこんなに来るとはみんな思いませんよねお互いに。
早めに来てよかった。

▼初日なので、監督の舞台挨拶付き。
大学時代、大寅興行さんのおばけ屋敷でアルバイトをしていた監督が、その後10年間、20代のほとんどを費やして
大寅興行のみなさんとその周辺の人々を追った内容。

▼映画中に出てきた言葉「見世物小屋を見世物にしたくない」の通り、
メディアの取材をほとんど断る大寅さんの裏側にまで入り込んでこんな映画が撮れたのは、監督いわく「僕がなめられていたからですよ」
「裏切ってしまった部分もあると思う」と言いながらも、お峰さんの素顔は決して映さなかったり、10年間手伝いながら旅をしたり、人間関係と信頼関係があったからこそできた希有な作品だなと。
そうでなければ残らなかったであろう映像や声がたくさん。
もっと見世物興行の中身を追ったものかと思っていたのですが、昭和まで見世物興行をやっていた他の小屋の話も含め、
戦後の見世物小屋の盛衰を見た人たちの声を丁寧に拾っていました。

▼どの小屋の人たちも、戦後すぐの札幌の大通り祭の時の話をするときは本当に生き生きとしていたのが印象的。
ああ、このころの札幌の大通り祭に行って小屋をはしごしたらどんなに楽しいだろうと。
そして現在、日本で大寅興行がただ1軒の見世物小屋であるように、
日本でただ1軒のオートバイサーカスがこの祭で興行をしているとのことで、途中ではその話も。

太夫がお峰さん一人となり、いつ見世物小屋なくなってもおかしくないと言っていたら小雪さんが現れ、現在も続いている。
でも、小屋の人たちはお峰さんに怪我させたくないし、やっぱり見世物小屋はいつなくなってもおかしくない。
そして、映画全体も、「見世物小屋は、少なくともこの形の見世物小屋は、確実になくなる」
という現実と向き合いながら進んでいくのです。

▼お峰さんの火炎放射の術も、一瞬ですが登場します。
これまで見た中でも5本の指に入るのではという見事な炎なのですが、小屋の人が「お峰さんの炎も小さくなったし」と言っていて驚愕。
若かりしころの裕子ねえさんやお峰さんが、セクシー衣装で蛇を持っているお宝ショットも登場。

▼この監督が小屋を追ったのが10年、そしてまつざきさんと私が小屋を追い始めてからも10年。
ちょっと重なる部分もあり。
どんな映画だと思って見るかは人それぞれだと思うのですが、私にとっては
思っていたよりも感動したというか、重みがあったというか、見ごたえがあったというか。
上手く言えないのですが。
見世物小屋を見世物にせずに、見世物興行とそれに関わる人を追って貴重な記録を残した映画だと思います。
本当、よくぞ撮ってくれたと思います。

▼師匠ことまつざきさんも大変満足したようで、2人して大満足で映画館をあとに。
追加のレイトショーや地方での上映も決まったようですし、これはちょっとでも興味がある人にはぜひ見てほしいです。